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外国人名地名の表記について(4)こんなエピソードも

2009/07/04 08:00

 

 

 これまでモータースポーツを担当する中で、外国人ドライバーの名前の表記に関して、いろんなエピソードに接してきました。それらをご紹介しつつ、この世界における表記の統一の難しさをご説明する材料とします。

 

 

 

■クルサード事件

 

  かつてマカオGPの後、そのまま参加チーム、ドライバーが日本にきて、富士スピードウェイでレースをする「インターナショナルF3」というイベントがありました。

 

 1991年だったと記憶していますが、このレースでスコットランド期待の若手ドライバーがやってきました。その名は「David Coulthard」。そう、昨季限りでF1から引退したデビッド・クルサードです。

 

  このレースの時、われわれ(ウチと各スポーツ紙と雑誌)は彼の名を「デビッド・クルサード」と表記しました。このとき、彼自身や彼を呼ぶ英国人プレスの発音も確認しましたが、十分に近いものと認識しておりました。後に彼がF1に昇格した際には、テレビもこの表記を使っていました。

 

  その後、彼がF1で優勝争いをするようになって、ようやく共同通信が彼の名を原稿に記すようになったのですが、その表記が「デービッド・コールサード」でした。

 

  たしかにね、彼の名前の綴りを、共同通信の基準にそってカタカナ表記にすると、そうなるんです(「Coulthard」→「コウルサード」→こういうウの使い方はしないので音引きに替えて「コールサード」)。

 

 

 しかし、「シューマッハー」と「シューマッハ」ならまだしも、「クルサード」と「コールサード」では、あまりに違いすぎました。彼が表彰台の常連になり、勝つようになると、新聞でもテレビでも彼の名前が表記され、また連呼されるようになったのですが、やがて、とりわけ共同通信の記事を使っている地方紙を中心に、読者から問い合わせが相次いだそうです。

 

  「テレビではクルサードといっているのに、なんで新聞ではコールサードなんですか」

 

  加盟社からのこうした問い合わせは、かなりの量が共同通信に伝えられたようです。それでも共同は、何年かは「コールサード」で頑張っていたんですが、ある年を前に表記を変更するという連絡をしてきました。新しい表記は「デービッド・クルサード」。変更の理由は「読者からの要望があったため」だったと記憶しています。言外に「ウチは間違ってないんだ」と主張しているような連絡文だったという印象が残っています。

 

なお「デービッド」は共同通信における「David」(英語)の決まりの表記で、ベッカムなどもすべて「デービッド」となっています。さすがにこっちまでは変わりませんでした。

 

  (ちなみに、この齟齬があったとき、例の「シューマッヒャー」と表記したスポーツ紙は、彼の名を「クールサード」と表記していました)


 

■「正しいのはバリケロなんだ!×2」事件

 

  2007年のシーズン開幕直前のこと、ホンダのモータースポーツ活動計画発表会がにぎにぎしく行われました。壇上に並ぶ本社首脳とF1チームの首脳、そしてドライバー。ホテルの大広間を埋め尽くした報道陣がマイクを手に質問を投げかけます。当然、オフのテスト時のチームの状況やら今年の抱負やらなんやら、そんな質問が中心なのですが、ある人物が手を挙げ、指名されるや、こんな場違いな質問をしました。

 

 

 「バリチェロ選手、あなたの名前を母国の言葉、ポルトガル語で発音してください」

 

  バリケロ、答えて

 「Rrrrrrぅ~ベンス、バRrrrリケッッロ」

 

 

 それまで「バリチェロ」と表記していた共同通信も時事通信も、その日から「バリケロ」表記に変わってしまいましたとさ。

 

 

 さて翌年。同じようにホンダのモータースポーツ活動計画発表会。新しくチームの代表になったロス・ブラウンに報道陣の注目が集まる中、ここでも質疑応答の時間になると、件の人物がまたしても場違いに、前年とまったく同じことを言い出しました。

 

 

 「バリチェロ選手、あなたの名前を母国の言葉、ポルトガル語で発音してください」

 

  ルビーニョ、答えて

 「Rrrrrrぅ~ベンス、バRrrrリケッッロ」

 

 

 まるでデジャブのようでしたが、2回目ともなると、このおじさん、これだけで済ませません。

 

  「そうですね。『バリケロ』なんですよ。私は作家だが、実は以前、バリケロ選手に個人的に名前の発音を確認して、それは知っていた。しかし日本では、どういうわけか『バリチェロ』という間違った表記がまかり通っている。だから昨年、この場でこの質問をしたが、1年経っても変わっていない。そこで今日、もう一度同じ質問をした」

 

  おっしゃるとおり、共同、時事の通信社は表記を変えましたが、テレビや雑誌はまったく変わっていない。何よりホンダ広報の表記はずっと「バリチェロ」のままでした。

 

  おじさんが得意げに話した内容を、通訳を通して聞いたルビーニョいわく、

「僕はバリケロでもバリチェロでも、別にどっちで呼ばれてもかまわないよ」

 

息巻いているおじさんとは対照的に、大変オットナァ~な返答をしてくれました。

 

 


 

 

 それにしても、このおじさんの行動、私にとっては大変迷惑でした。言っていることは正論ではあるし、それは認めますが、じゃあ、なぜそれが迷惑なのか。貴重な質疑応答の時間をそんなことに使わんでくれというのはもちろんですが、それだけではなく、まさに名前の表記という問題においてです。そしてそれが、共同表記の問題点として私が日ごろ感じていることの理由でもあります。


 

それについては今後敷衍しますが、次回は核心の「なぜ表記が分かれるのか」です

 

 

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コメント(6)

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2009/07/04 11:28

Commented by - さん

こんにちはー。

あ、あれ?もしかしてフェテル事件wってこんなに拡がりを持ち出してしまっていたのですか?
すいませんすいません・・・いやこんなことになるとは。

私も英文科卒なので「原語読み」の重要性もわかるのですが、実は私が言いたかったのは「どうせ外国語の発音は正確に日本語に持ってこれないんだから、誰が誰が(=何を指すか)だけすぐわかるように、各メディア間で統一してくらさい」と言うことだったのです。。。

Davidを英語でDavidと発音するのならまだわかりますが、「ディヴィッド」でも「ディヴ」(これは字面を考えたらまなけもののいい方ですね。綴はカジュアルな省略形じゃないのにw)でもどっちでもいーじゃん、原語読みに近づければ近づける程、ニッポンジン多分に聞き取れないヒトオオゼイデルーネ、と発音の表記自体はイイカゲンな考えをもっておりマッスル。w

 
 

2009/07/04 11:40

Commented by - さん

あ、それとですね。
私個人は「外国の原語読みなんかある程度無視して日本語での呼び名、かなを統一すべき」だと思いますよですよ、スポーツの世界というよりも、現実で。

何かというと、韓国人が日本で銀行口座を作るとか届け出を出すとき・・・いるんですよ、「何通りにも読めることをこれ幸いに、複数名義を使っちゃう」人が。
(銀行って外国人だとカナ表記の口座作成を認めてませんでしたっけ?)

ウラコーザー、カクシコーザー、ウラコーザー?w

1つの物(人も)に対し、1つの字(つづり)が与えられているのに、幾通りにも使える、という状況は、現実的には犯罪行為をも招き兼ねないんです。
以外と重要なおまけでした。

 
 

2009/07/10 04:21

Commented by セアラ小太郎 さん

>おじさんが得意げに話した内容を、通訳を通して聞いたルビーニョいわく、
>「僕はバリケロでもバリチェロでも、別にどっちで呼ばれてもかまわないよ」

多分、ルビーニョ自身は(ここでは英語発音に会わせますが)は
「ポ語の発音の“フーベンス・バリケロ”でと書こうが、英語発音の“ルーベンス・バリチェロ”で書こうが別にかまわない」
と、言う意味で言ったのでしょう。

しかし…。

ポ語でと言うなら「ファーストネームも『フーベンス』とすべきところを理解してない(あるいはわざとスルー?)
自称「作家」の先生は『バリケロの部分だけが正しい=俺正しい』でどうやら満足されたようで…。

こんなのが、作家やら報道関係者にいるんじゃあね~。

 
 

2009/07/10 05:43

Commented by 只木信昭 さん

To セアラ小太郎さん

>「ポ語の発音の“フーベンス・バリケロ”でと書こうが、英語発音の“ルーベンス・バリチェロ”で書こうが別にかまわない」
>と、言う意味で言ったのでしょう。

 いや、ここでは本文に書きましたように、「どっちで“呼ばれても”かまわない」と申しておりました。

 第2回に

>「シューメーカーじゃない、シューマッハーと呼べ」というような摩擦は、あまり起こらないようです。

と書きましたが、彼もまったくそういう姿勢で、異なる文化圏において異なる呼び方をされるということを当然と受け止めていると思われます。特に、日ごろから英語の世界にいて、英語の発音で呼ばれることには何の違和感も感じていないようですしね。



 
 

2009/10/05 10:18

Commented by nihonhanihon さん

日本式にどう表記するか以前に、既成の事実として、異なる言語環境下では言い方が異なっていますよね。

古代ローマの有名どころでもそうで、たとえばラテン語のユリウス・カエサルは英語のジュリアス・シーザーとか。

「日本」も、北京語では「リーベン」(リはジに近い?)、英語では「ジャパン」、ポルトガル語だと「ジャポン」、スペイン語だと「ハポン」・・。

イギリスのヘンリーはフランスでは「H」の発音がないことから「アンリ」となりますよね。
ドイツのゲオルク=イギリスのジョージ。

旧約聖書・新約聖書なんて話にまで行くと、わけがわからなくなりそうですので、これにて。

 
 

2009/10/06 17:31

Commented by 只木信昭 さん

To nihonhanihonさん
>日本式にどう表記するか以前に、既成の事実として、異なる言語環境下では言い方が異なっていますよね。
>

 えっと、この連載の第2回で、この件には触れております。よろしければあわせてお読みください。

 
 
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